Zeno Tec System

 

Zeno Tec System[t/span>Wieland)はフルブリッジの加工ができるシステムで

他社のCAD/CAMにない特徴をもつ。部分的には開発途中であることも事実であるが、

200610月現在でのシステム状況を報告する。

Zeno Tec Systemの概要

Zeno Tec Systemの構成は、カメラとレーザーでモデルを20μm.以上の精度でスキャニングし

[z[/span>shape Scan Itでコントロールされる3shape D250 scanner

スキャニングしたデータからフレームをデザイン設計するDental Designer

設計されたフレームデータをDiscに配置しCAMを制御するZeno CAM

1本のフレームを20分で削り出す能力をもつZeno Premium 4820

フルブリッジのサイズにも対応するZeno Disc

半焼結状態で加工されたジルコニアフレームを1400℃の高温で11時間かけて

完全焼結するZeno Fireである(図1)。

Zeno Disc

Zeno Discは半焼結の酸化ジルコニアZrO2)であり、96%の酸化ジルコニアと

4%の酸化イットリウムからなる。

サイズは直径98mmで10mm/14mm/18mm/20mm/25mm5種類の厚みが用意されて

おり様々な症例に対応できる要素をもつ。

また、1つのDiscから最大で2025歯分のフレームが加工できる(図2)。

CAD/CAMの加工精度はスキャニング精度・ミリング精度・Disc精度の3つが重要

であるが、Zeno Discは世界特許のCIP法(冷間等圧加工法)により製造されている

(図3)。全方向からの油圧プレスにより均一で高密度になっているDiscは完全焼結

工程の約20%収縮時に均一な収縮を示し、ミリング精度をそのまま再現することが

可能となる。また、Disc製造時の状態による収縮誤差をロット単位で検査したデータ

をバーコードで管理している。このデータはミリング時の誤差修正に反映され、

安定した加工精度が可能となっている。単純なホットプレス法により製造されている

ブランクの場合は、上部の密度が高く内部の密度が低くなる傾向がある。

この不均一な状態がフレームの精度差となって現れることになる。

Zeno Discの色調は現在ホワイトのみであるが、焼結時に着色するシステムも現在開発中

である。

図2

直径98mm10mm/14mm/18mm/20mm/25mm5種類の厚みが用意されており

様々な症例に対応できるZeno Disc

 

図3

ジルコニアブランク製造に使用されているCIP法(冷間等方圧加工法)。

パスカルの原理を応用し、全方向からの油圧プレスにより均一で高密度に製造できるCIP法は

安定したフレーム精度に反映する。等方圧加圧法には他にHIP法(熱間等方圧加工法)などがある

が、類似する金型によるホットプレス法でジルコニアブランクを製造している場合は密度が不均一

になり、焼結時に不均一な収縮を発生させるので確認してみるとよいだろう。

 

スキャニングに関する留意点

   a 支台歯形成

CAD/CAM利用に際してシステム別に多少の支台歯形成の違いがあることを理解しなけ

ればならないが、他のシステムとの混乱を避けるために共通する一般的な内容に止める

ことにする。

図4

CAD/CAMでクラウン内部をミリングする際に使用できるバーの直径は1,0mmであり

Discの収縮率が20%であるから、完成時のサイズは0.8mmが最小値になる。このため、

支台歯の上部は半径0.4mmのアールを下回ってはならない。また、レーザーが照射される角度に

対し、影となりやすいジャンピングショルダーは正確なスキャニングができないため、

[z/span>-6度の角度を確保したい。

図5

マージンラインの凹凸は臨床上仕方のないことかもしれないが、CAD/CAMシステムにおいては

必ず不適合を発生する。模型上での調整が必要になる一番の原因である。

図6

連結をするブリッジの場合、口腔内では問題なく挿入できる並行性の確保されていない支台歯の

関係でも、4軸のCAD/CAMシステムでは垂直方向からのミリングになるため、マージンが拡大加工

されてしまう(図中赤色部)。このため各支台の平行関係は4度以上を確保する。

[t/span>5軸であれば垂直方向と斜め方向からのミリングが可能)

 

   b 模型製作

模型製作もスキャニングシステムによって大きく異なる要素が多く、本システムの場合

は模型基底面から支台の上部までの高さが45mm以内であることが必要で、45mm以上

であるとスキャニングできなくなってしまう。咬合器装着をスキャニング以前にする必

要のある症例はスプリットキャストが必須となるが(図7―a)、

他社スキャニングソフトと大きく異なり、副支型式にも対応できることで臨床上の

自由度が広がるだろう(図7-b)。

また、ブロックアウト素材は日常使用しているもので良いが表面硬化剤は極力薄くし、ダイ表面の

セメントスペースなどのコーティングはしないほうが良い。

図7―a

模型基底面から支台の上部までの高さが45mm以内であることが必要。

当社が使用するジロフォームシステム(GIRRBACH社)は総ての条件を満たす。

図7-b

副支型にも対応する。左の支台は副模型を配置したもの。

 

   c バイト・Wax-up

対合歯とのクリアランス情報や排列情報をフレーム設計に反映するため、ダブルスキャン機能が

ある。この機能を有効活用するためにはシリコンバイトや参考模型・Wax-up・人口歯排列など、

必要に応じて情報が必要である(図8~9)。

図8

バイトを含めたスキャン

図9

プロビジョナルからシリコンコアーを採得し、フレームスペースを情報化したスキャン

図10

欠損部が広範囲の場合やフレームデザインをコピーしたい場合などはWax-upや人工歯排列、または、プロビジョナルから情報をスキャンすることができる。

 

   d マスキング

スキャニングのレーザーシステムにより読み込むことのできる対象物は異なっているようであるが

、本システムの場合はマスキング処理をすることによりほぼ総ての材料を読み込むことができる

(図11・12)。

      

図11・12

ワックスやレジンなどレーザーが透過する素材やインプラント材料の金属表面は通常スキャン

エラーを起こすが、マスキング処理を行うことによって解決できる。カスタムアバットメントも

模型上でWax-upする必要も無い。

 

 

マスキング材・他にシリコン専用のパウダータイプがある。

設計の留意点

スキャニングデータからPCu펆Dental Designer)で設計をするが

メーカーから提供されているデフォルトデータでは、各臨床家の求める適合精度を

達成する確立は低いかもしれない。しかし、メーカーデフォルトデータを変更すること

は、ミリング時にマージンのチッピングを発生させる可能性が高くなり作業の遅延に

つながるため好ましくない。データを変更することはオペレーターの責任が伴うこと

を覚悟する必要があるだろう。また、正確なマージンを得るためにはダイの形状に応じ

た時間を要することになり、症例ごとに大きな設計時間の差が出てしまう。

製作効率を一番に考えてしまうと本システムのポテンシャルは発揮されない傾向が強く

デジタル制御されるCAD/CAMであってもラボが異なることにより歴然とした差が出て

しまうことは、けして好ましいとは言いがたい。

 

   a モデリングの自由度

Dental Designerでのモデリングは自由度が高く、時間をかければ細かなフレームデザインを付与す

ることができる(図13~15)。しかし、ワックスアップの経験があるオペレーターでないと

適切なフレームデザインが作りにくいシステムになっている。次期バージョンでは自由度に加えて

オート機能を追加する計画があり、短時間で正確なモデリングが誰にでもできるようになるであろう。

図13

クラウンはもちろんのこと、ラミネート・インレー・アンレーさらにはアクセスホールを

モデリングすることも可能である。

図14

既製アバットメントを加工して製作されたカスタムジルコニアアバットメント

図15

既製アバットメントを利用してスクリューリテインの上部構造に調整されたフレーム

 

   b 連結面積と禁忌症

完全焼結されたフレーム強度は表面硬度が最大1290Hvで曲げ強度が最大1500Mpであり

ブリッジに十分対応できる機械的強度を有するが、連結面積は部位によって異なる設計

を必要とする(表1)。Dental Designer2次元ビューに連結部の形状と面積が表示され

正確な設計が可能となっている(図16)。また、連結面の形状は幅が2倍になっても

強度は2倍になるに過ぎないが、高さが2倍になると強度は8倍にもなることを考慮し、

可能な限り丸型で高さを重視することが重要である。

禁忌症例は連続する3歯以上の欠損とされており、フレーム最小厚は前歯で0.4mm犬歯・臼歯では

0.[{/span>mmと指示されている。

表1

部位により必要最低連結面積の数値が異なる。可能な限り大きな面積を心がけたい

図16

Dental Designer2次元ビューに連結部の形状と面積が表示され、正確な設計が可能となっている

 

 

加工精度とフレーム調整

現在のCAD/CAMの加工精度は高いといってよいが、半径0.4mm以下のカーブを有するマージンは

再現されないため調整が必要となる(図17)。フレームの調整はダイヤモンドバーを注水下で使用

し、マイクロクラックの発生を抑制する。また、マージン部のフレームの反射を最小限にするため

マージン上方1.0mmから可及的にゼロマージンに調整する。曲げ強度の低い酸化アルミナのフレー

ムでは困難な調整であるが、曲げ強度の高い酸化ジルコニアでは金属と同じような調整が可能であ

る(図18)。

ブリッジにおける加工精度は6本程度のブリッジとフルブリッジでは大きく変わるが、特殊な設計

をすることにより、臨床上の許容範囲に収まる適合が可能と思われる(図19\/span>23)。

また、Zeno Fireで完全焼結する際にフレームの変形を防止するため、フレーム全体にドロップの

付与と中央のDiscを残して支えているが、フレーム間での高低さとドロップまでの高さが必要とな

り、高精度の代償としてコストが高くなる(図24-b)。

図17

半径0.4mm以下のカーブを有するマージンは再現されないため調整が必要となる

図18

曲げ強度の低い酸化アルミナのフレームでは困難な調整であるが、曲げ強度の高い酸化ジルコニアでは金属と同じような調整が可能である。

十分な冷却と強いトルクをかけないようにすることがポイントである

マージンの反射を抑制するためには可及的に0.1mmまで調整する。

図19

6本ブリッジの適合状態

図20

焼結時に変形しないようにフレーム上部に取り付けられたスライドドロップとフレームの中心に残されたDisc

 

図21~23

図20の方向別拡大状態

図24-b

加工方向に制約を受けるため、各マージンからドロップまでの高低差により、予想以上にDiscの厚みを必要とする。高精度追求の代償である。

 

 

Zirox

2006/10現在は輸入されていない。

Ziroxは酸化ジルコニアのフレーム用レイヤリング陶材であり(図24)、ほぼ総ての酸化ジルコニア

フレームに使用することができる。また、リューサイトを含まないHDAM™*の微細構造のベニアリ

ング用陶材であり、マイクロクラックのない均一な単層構造のである(図25・26)。また、

他社製品と較べ、ライナー層とデンティン層が非常に均質で気泡が発生していないため、

焼成トラブルのない安心感がある(図27.28)。

Ziroxの曲げ強度は120Mpで他社製品と比べて高強度であることが伺えるが、一方では

硬すぎる傾向ではとの意見もあり今後の観察が必要と思われる(図29)。

熱膨張係数は約. 10·10-6K-1 [t/span>25-500 °C)で焼成温度が900º C(デンティン・エナメル陶材)である。

色調もラインナップもReflexと同じであり、機械特性も類似している。焼結時の表面粗さはReflexよりも緻密な

表面粗度を示すため、生体親和性においても効果が期待できる(図30)。

図24

ZiroxReflexと同じラインナップで構成され、色調も同じである。

     

図25(左)

マイクロクラックのない均一な単層構造(図25~30はWieland社資料)

図26(右)

他社製品に確認されたマイクロクラック

      

 

図27(左)

ライナー層とデンティン層に均質で気泡が確認されない。

図28(右)

他社製品に確認された気泡

図29

Ziroxと他社製品の曲げ強度比較

図30

Reflexよりも緻密な表面粗度を示す